起承転結物語
39日目
~物語~
私は人に流されやすい。
言われたことはすべて信じてしまうし、それと逆のことを言われたら今度はそっちを信じてしまう。
私ももう大学3年生だ。
落単は一つもなくGPAも3ほどのごく普通の大学生。
就職活動の準備を始めなければいけない。
こんな性格だから、人に流されて得た情報をもとに、ある程度進んだと思ったら違うやり方だといわれ、今度はそれを信じては間違いだといわれ、なかなか進まない。
そうこうしている間に明日からは8月だ。
夏休みにはインターンに行かなければならない。
もういっそのことすべて放り出してしまおうか。
梅雨も明けていよいよ本格的な猛暑続き。
全くやる気の出ない毎日。
受験生も就活生も感情は一緒。
たしか高校3年生のこの時期も、こんな感情だったな~。
こうやって必要のないことばかり考えて、本当にするべきことは後回しにする。
人間とはこうでなくちゃね、なんて思う時もある。
夜は虫の声でも聞きながら、ゆっくり眠りについた...
おはよう。
ん?何かおかしい。
いつもの自宅、いつものベッドでいつも通り寝たはずだ。
いつもの朝を迎える予定だった。
しかし、まるで旅行2日目の寝起きの様な、どこか不思議な感覚に陥っている自分がいる。
もちろん周りは何も変わらずいつも通りの自宅だ。
私の違和感はいったい何なのか。
気のせいで終わらせるにはちょっと納得がいかなかったが、今日はアルバイトに行かなければならないので、さっそく準備に取り掛からなければ。
ん?
違和感の正体がわかった。
私が起き上がり、準備をしようとしたところで気づいてしまった。
寝ている私が見える。
外を眺めてみる。
今日という時間が止まっている。
私だけ意識がある。
この時の私はなぜか冷静で、すぐに現状の理解ができた。
これは夢だ。
そう判断できた。
ただ、今までに見てきた夢の中では圧倒的にリアルだ。
まあ夢に変わりはない。
さて、これから何をしようか。
アルバイトにも就活にも大学にも、何にも追われない唯一の時間、空間。
楽しまなくちゃもったいない。
と考えた途端、
目が覚める。
いつもと変わらない部屋だ。
横になっている自分の姿など見えない。
ただ夢から覚めただけだ。
アイスを食べようとしたら溶けていて床に落ちてしまったような感情だ。
私にも何か特別な経験が起きてもいいじゃないか。
アニメの様なとんでもエピソードを夢の中くらい味合わせてくれてもいいじゃないか。
そんなことを心の中でつぶやきながらしぶしぶアルバイトの準備をするのだった。